Google社員は歩きながら集中力を高める! 歩行瞑想の効果とやり方

現代社会は、マルチタスクを強要される社会環境にあります。
ビジネスの世界でも、膨大な量の仕事を効率よくこなせるビジネスパーソンが、もてはやされる状況です。
しかしながら人間の脳は本来、マルチタスクに向いていないことが判明しています。
なぜなら脳が一度に注意を向けられる総量には、限りがあるからです。
さらに、「マルチタスク」と言えば聞こえはいいですが、何か一つのことをしながら、他のことを考えたりこなしたりする「ながら作業」は、脳を疲弊させるということが分かってきました。
そしてこの「ながら作業」は脳から大切な機能を奪っていきます。
集中力です。
いわばオートパイロット(自動操縦)状態になっている脳からは、注意を固定しておく力がなくなってしまっているのです。
つまりマルチタスク社会の脳疲労を対策し、パフォーマンスの向上を目指すのであれば、一つの事柄に焦点を当てる必要があります。
そこで注目されているのが、「マインドフルネス瞑想」です。

マインドフルネス瞑想とは、マサチューセッツ大学の脳科学者ジョン・ガバット・ジンが、仏教のヴィパッサナー瞑想から、宗教的な側面を取り除いた科学的瞑想を考案し、体系化した瞑想のことです。
マインドフルネス瞑想を実践することで、知覚・身体感覚・情動制御・自己意識に関わる脳部位に変化を生じさせることを、脳科学は示しています。
つまりマインドフルネスは、脳を健全に保ち、意思決定・自己制御能力を支え、有害なストレスから自身を守るための方法と言えます。
マインドフルネス瞑想の効果
人間の脳は放置しておくと、とにかく過去や未来のことを考えようとすると言います。
これは脳の雑念回路DMN(デフォルトモードネットワーク)の活動によるものです。
DMNとは活動的な思考をしていない時でも働く、脳のネットワークのことであり、例えるならば車のアイドリングのようなものです。
これにより人間は過去を整理し、未来を予測することができるのですが、この活動が過剰になるとうつ病や不安障害に陥ることが最近の研究で分かっています。
さらにこのDMN活動が、脳エネルギー消費のおよそ8割を占めており、例え睡眠時でも脳は疲弊し続けているのです。
この過去や未来からくるストレスから解放され、今、目の前の出来事に集中することが、マインドフルネスの目的です。
SIYとは
マインドフルネスに、いち早く企業として取り組んだのがGoogleです。
Google社は、最新の脳科学に基づいて「SIY」と呼ばれる能力開発メソッドを作りました。
SIY(Search Inside Yourself)は、EQ(エモーショナル・インテリジェンス)という概念が核にあり、これは自己の感情コントロールをするとともに、他人の感情を適切に理解し、共感する能力のことで、感情の知能指数と呼ばれています。
このEQにおける自己認識・自己制御・共感・モチベーション・コミュニケーションという5つの要素に注目し、「心と思考力」を科学的なアプローチによって強化するプログラムがSIYなのです。

SIYではEQを高めるために、マインドフルネス瞑想を使います。
メタ認知を効かせ、「今この時」にただ集中・没頭するというセルフコンパッションへのメンタルトレーニングと言えます。
歩行瞑想(Walking Meditation)とは
「集中とリラックス」のバランスを正し、マインドフルな状態にするために、SIYで実践しているのが「ムーブメント瞑想」(動きを活用した瞑想法)です。
通常、マインドフルネス瞑想では呼吸に意識を向けますが、ムーブメント瞑想では自分の動きに意識を向けます。
歩行瞑想のメリット
通常のマインドフルネス瞑想と比べ、歩行瞑想でのみ得られるメリットを見てみましょう。
健康面の改善が期待できる
ウォーキングは脂肪燃焼効果の高い有酸素運動です。
歩行瞑想では、「歩く」ことに意識を向ける瞑想のため、瞑想効果と同時にウォーキングによる健康効果も享受することができます。
気軽に瞑想できる
通勤や散歩など、「歩く」動作を行う時に歩行瞑想は実践することができるため、わざわざ座禅を組む時間を割く必要もなく、手軽に瞑想を日常に取り入れることができます。
感覚がつかみやすい
歩行瞑想では、「右足が地面に着地する」「左足で地面を蹴る」などのように、動作に名称を付けて認識をする「ラベリング」と呼ばれる作業に意識を置きます。
通常マインドフルネス瞑想では座って呼吸に意識を置くため、中にはどうしても注意散漫になってしまい続かないという人がいます。
歩行瞑想では動作に着目するので、座禅を組んで瞑想するよりも感覚がつかみやすいというメリットがあります。
歩行瞑想のやり方

1.右足を踏み出した時に「右」、左足を踏み出した時に「左」とラベリングする
2.立ち止まった場合は「両足で立った」、Uターンした場合は「回った」など、動作に合わせラベリングを行う
3.足が離れたら「離れた」、到着したら「着いた」など、慣れてきたらラベリングを細分化する
ポイント
「ラベリング」:「歩行の感覚を実感すること」=1:9の比率で行うこと
周囲の情報「見た・聞いた・感じた」とラベリングする
雑念が生まれた場合も「雑念」「妄想」などラベリングする
歩行時に考え事をするという思考から離れること