ストレスを軽減する為の8週間プログラム「マインドフルネスストレス低減法」とは

「マインドフルネス(mindfulness)」とは、「気づき」「注意」などと訳されますが、「ありのままの自分をメタ認知すること」です。
マインドフルな状態になる手段として、瞑想(meditation)を用います。
瞑想というと、宗教的なものと思われがちです。
しかし、そもそも原始仏教においてブッダが始めた瞑想は、自分自身の心や不安と向き合い、全てを受け入れるメンタルを作り上げる(=解脱)のために行われたのです。
現在の日本仏教における「座禅(座って行う瞑想)」は、ブッダと同じ苦行を経て、ブッダと同じ解脱を手に入れることを目的としているため、印象が変わって見えるのです。
人間は自らストレスを作り出す生き物
原始仏教における瞑想の目的は、現代の言葉で平たく言うと「メンタルコントロール」です。
人間は例え、外部から受ける不安やストレスを全て排除することが出来たとしても、不安やストレスを自分の中から作りだしてしまう生き物だと言います。

カルフォルニア大学バークレー校Hanson博士の研究よると、脳はネガティブな経験から脳の構築を行うことに長けていると提示されています。
人類の祖先は、自然災害や天敵による脅威に、日々晒されながら進化してきました。
生き延びる上で、切迫した状況から学習できる脳であったため、現代を生きる私たちもネガティブな経験や思考にスポットを当ててしまう脳の構造なのです。
そしてそのネガティブな思考を何度も反芻してしまうことが、うつ病を始めとした精神疾患を引き起こす原因とも言われています。
マインドフルネスの起こり
1970年代にマサチューセッツ工科大学分子生物学者ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)博士が、マインドフルネスストレス低減法 (Mindfulness-based stress reduction/MBSR)を体系化します。
博士は禅やヨーガに造詣が深く、仏教の教えから「今この瞬間」に意義を置くマインドフルネスの概念を、臨床医療に応用しようと考えたのです。

慢性疼痛に苦しむ患者から、痛みそのものを「瞑想」で取り除くことはできないものの、痛みとの付き合う方法を「瞑想」から得ようとしました。
やがてこの治療法は、うつ病を始めとした不安障害の症状緩和や、再発防止に役立つのではないかと考案されたのが、マインドフルネス認知療法(Mindfulness-based cognitive therapy/MBCT)です。
このようにブッダが行った瞑想が2500年の時を越え、科学というエビデンスを携え現代風にアレンジされたのが「マインドフルネス瞑想」なのです。
マインドフルネスストレス低減法のやり方
MBSRは8週間のプログラム化された瞑想です。
マサチューセッツ大学に設立されたマインドフルネスセンターで行われているプログラムを元に、世界各国のマインドフルネスセンターで実際に行われています。
MBSRのプログラムは
・ボディスキャン瞑想45分
・静座瞑想10分
・普段行っている瞑想を適宜行います。
ボディスキャン瞑想のやり方
仰向けになり、リラックスし腹式呼吸を行います。
MRIの如く、自分の身体をスキャンするように感じる瞑想です。
1. 足先、指のように末端から始めましょう。
例えば、指→掌→手首→肘下と部位を移動しながら自分の身体を意識していきます。
2. 頭頂部から爪先までスキャンしていきましょう。
静座瞑想のやり方
1. 静かに座り背筋を伸ばしましょう。
座禅のように座る体勢でも、椅子に浅く腰掛けても良いです。
2. 手を膝の上に乗せ、肩を落としリラックスします。
3. 10分間瞑想を始めます。
4. 呼吸に意識を向け、途中で雑念が浮かぶことに気付くと思いますが、再び呼吸に意識を向けましょう。
呼吸に意識を向ける方法は、呼吸を数える「数息観」という方法でも良いですし、鼻から息を吸う鼻から息を吐くことを感じる「入息出息観」でも良いです。
普段行う瞑想
普段行う瞑想は、何でも構いません。
SIYで紹介されている「歩行瞑想」のようなムーブメント瞑想でも良いですし、「慈悲の瞑想」に代表されるような祈りの瞑想でも良いでしょう。
呼吸瞑想のやり方
マインドフルネスストレス低減法は、いわば瞑想経験者向けのプログラム化された瞑想法です。
瞑想は瞑想時間に比例して、高い効果が表れることが分かっており、マインドフルネスストレス低減法では、ストレス低減効果やストレス耐性の向上、うつ病・不安障害の予防に高い効果があることが分かっています。
しかしながら毎日最低1時間の瞑想を8週間に渡り続けるということは、瞑想初心者には至難の業です。

瞑想初心者でしたら、まずは3分間の「呼吸瞑想」から入りましょう。
例え3分でも、誰しもが喉から手が出るほど欲しいであろう「集中力の向上」が見込めます。
呼吸瞑想のやり方
1. タイマーを3分にセットします。
2. 静座瞑想のように、肩の力を抜き背筋を伸ばして瞑想を始めます。
無理にあぐらを組む必要はありません。
瞑想にマイナスイメージを抱かないように、リラックスした体勢で行うことが重要です。
3. 「入息出息観」を行い、呼吸を観察しましょう。
呼吸をコントロールしようとしなくて構いません。息の出入りを認識します。
4. 雑念が浮かんでも、気にする必要はありません。
そのうち雑念が消える瞬間がやってくるので、できるだけ呼吸に注意を向けることだけ意識すれば良いのです。
日本には一期一会という茶道の言葉がありますが、瞑想は「ビギナーズマインド」が大切です。
いつもと同じ瞑想でも、初めて瞑想を行うような初心で瞑想に臨むことを心掛けましょう。