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マインドフルネスが精神疾患に有効な理由

不安障害

新型コロナウィルス感染症が拡大している中、うつ病を始めとした精神疾患の罹患者が増加していると言います。
コロナ禍における、不安感・閉塞感・孤独感などが作用しているであろうことは、説明するまでもないと思います。

さらにオックスフォード大学の研究によると、新型コロナウィルス感染症から回復した患者の30%以上が、6か月以内に精神疾患を発症していると報告されており、新型コロナウィルスが与える脅威は、私たちの身体のみならず、心にまで及ぶということが理解できます。

かつて「リーマンショック」が多くの失業者と、多くの精神疾患患者を生み出したことは記憶に新しいと思います。

実は経済悪化と精神疾患の患者数は相関性があることが分かっており、経済の落ち込みが「リーマンショック」の3倍と言われている「コロナショック」では、あらゆる面から被害が甚大なものになると想像ができます。

「今ここ」に集中する訓練

人間は「今この瞬間」を生きているようでいて、実はその意識は「過去や未来」(過去への後悔や未来への不安など)に捉われ、今を「心ここにあらず」の状態で過ごしていることが多いと言います。
事実、ハーバード大学の研究によると、人間は活動している約47%の時間を、目の前で取り組んでいる事柄以外のことを考えながら過ごしていると報告されています。

これは雑念回路と呼ばれる脳のDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の働きによるもので、記憶の定着やアイディアの創作には欠かせない回路ではありますが、近年DMNの異常な働きがあらゆる精神疾患に関わっているということが分かってきました。

マインドフルネス瞑想をする女性

そしてこのDMNを鎮静化させる有効な方法として、科学的に立証されているのが「マインドフルネス(mindfulness)」です。

マインドフルネスは、「今この瞬間」にスポットを当て、現在に意識の照準を合わせる訓練であり、効果的な精神療法として、医療現場に取り入れられています。

マインドフルネスの歴史

マインドフルネスを世界的に有名にしたのは、マサチューセッツ工科大学のジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)博士の功績です。

東洋の禅に造詣があった博士は、仏教の伝統的な瞑想法であるヴィパッサナー瞑想をベースに、慢性疼痛によるストレス軽減を目的に、「マインドフルネスストレス低減法(Mindfulness-based stress reduction/MBSR)」を体系化しました。

博士の考案した「マインドフルネスストレス低減法」は瞑想から宗教的な教えを除外し、医学的・科学的根拠に裏打ちされた現代版瞑想法と言えます。

その治療技法を、うつ病や不安障害、パニック障害などの認知療法として確立させたのが、マインドフルネス認知療法(Mindfulness-based cognitive therapy/MBCT)です。

マインドフルネス認知療法は、再発を繰り返すうつ病患者(3回以上)に対して、再発予防効果が認められたという臨床結果が得られており、第三世代の臨床療法として認められています。

マインドフルネス実践が精神疾患に効く理由

先程、人間の意識は「今ここ」ではなく「過去や未来」をさまよっていると述べましたが、例えば過去に悔やまれるような経験をしていた場合、その過去に意識が捉われることで、何度も変えられない過去について悩み、何度も後悔を経験することで、「辛い」という感覚が蘇ってきます。

精神疾患を発症しやすい傾向として、「考え続ける」という行動パターンがありますが、「変えられない過去」という堂々巡りが、思考をネガティブな方向へと引き込んでしまうのです。

ネガティブの反芻

「考え込む」という状態は、自分の考えに意識や注意が集中している状態です。

マインドフルネスを通して「今の自分自身と置かれている状況に集中すること」を訓練することで、過去は過去、未来は未来、現在は現在と切り離して考えられるようになり、例え辛い考えや記憶がわいてきても、それに捉われることなく、自分のしたい事・するべきことへと目を向けられるようになるのです。

マインドフルネスによる、ストレス軽減効果は脳科学的にも認められており、さらに規則的な瞑想を繰り返すことで、精神疾患の再発防止に効果があるのです。

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